メッセンジャーアプリの枠を超え、生活のあらゆる場面でユーザーとの接点を持つようになったLINE。法人向けにもさまざまなサービスを展開しているが、各サービスで蓄積したデータを横断的に活用していくためのデータプラットフォーム「LINE DATA SOLUTION」が立ち上がった。責任者を務める宮本裕樹が、立ち上げの背景や今後の戦略などについて語る。
LINEの法人向けサービスの活用シーンをより体系的に
――「LINE DATA SOLUTION」の概要について教えてください
あらゆるデータを1つのIDに統合することで「Person(人)・Location(場所)・Moment(時間)を問わないコミュニケーションを可能とする」——。「Any1」というキーワードをコンセプトに、LINEとして未来のデータプラットフォームを実現する取り組みを「LINE DATA SOLUTION」という形で示していくつもりです。
――具体的に、どのような機能を持っているのでしょうか?
LINE公式アカウントやLINE広告を利用する企業や店舗が、新たな顧客獲得に向けて各サービスで蓄積したデータを横断的に活用していく。そのための機能やプロダクトを体系的に利用できるデータプラットフォームです。
これまでも、ビジネス領域でLINEを活用するためのサービスについて局所的かつ断片的に情報を発信してきましたが、今後は「LINE DATA SOLUTION」という名称で体系化された情報整理ができればと考えています。
LINE株式会社 マーケティングソリューションカンパニー カンパニーエグゼクティブ 宮本 裕樹
――立ち上げに至る背景を教えてください
10年ほど前から進歩してきたアドテクノロジーが現在、潮目を変えています。特に昨今3rd party Cookieの廃止やIDFAのオプトイン方式への仕様変更により、企業におけるデータ取り扱いが抜本的に見直されている最中です。LINEのプラットフォームにおいても1st partyデータを含めた“広域な”データ接続性を発揮できる取り組みを具現化したいと考え、「LINE DATA SOLUTION」を立ち上げました。
より広域なデータ連携で実現できること
――より広域な接続性を持つデータ連携により、LINEではどのようなデータソリューションが提供できるのでしょうか?
例えば、LINE広告ではこれまで「LINEターゲティング配信」が広く用いられてきました。ターゲティング配信とは、年齢・性別・地域・興味関心・詳細(配偶者・子ども・携帯キャリア・テレビ視聴頻度)などのセグメントを利活用するターゲティング機能です。特に「興味関心」セグメントでは、これまでLINE内のユーザー行動履歴をもとに分類した“みなし属性(※)”として18種類のインタレストカテゴリを用意していました。
※ユーザーが「LINE」上で購入・使用したスタンプや興味のあるコンテンツのほか、どのようなLINE公式アカウントと友だちになっているかといった傾向をもとに分析(電話番号、メールアドレス、アドレス帳、トーク内容等の機微情報は含みません)したもの。属性情報の推定は統計的に実施され、特定の個人の識別は行っておりません。また、特定の個人を識別可能な情報の第三者(広告主等)の提供は実施いたしておりません。
※18種類のインタレストカテゴリ
ゲーム/デジタル機器・家電/スポーツ/職・ビジネス/ファッション/家・インテリア・園芸/テレビ・番組/音楽/教育・学習・資格/金融/健康/自動車/エンタメ/ショッピング/書籍・マンガ/食べ物・飲み物/美容・コスメ/旅行
出典:「LINE Business Guide 2021年7月-12月期」
しかし、今後は現状の属性だけでは広告主のリーチポイントに対応できないケースがたびたび発生すると予測されます。より多様なインタレストカテゴリを揃えていくことは、LINEにとっても課題の一つでした。今後、それらインタレストのデータが拡充できれば、これまでよりも幅広く精緻なターゲティングが可能になり、ブランドマーケッターの方たちにも利用いただきやすくなると思います。
また、下図のようなLINEならではの世界観を実現するためにも、ソリューションが散在するのではなく、体系的にまとめていくことが、利用いただく企業にもとっても重要なポイントになるかと考えております。
――「LINE DATA SOLUTION」内に設置された「LINE Marketing Lab」とは?
広告主や代理店とともに、“実験的”な広告分析を行っていくコミュニティーとしての役割を持たせようと考えています。
もとより、マーケティング戦略としては「同質化と差別化」というテーマを掲げています。競合と同じものを提供して相手の差別化ポイントを無効化するという意味での「同質化戦略」、一方で自分たちにしかできないことを提供していく「差別化戦略」という使い分けです。
サービスローンチからかなりの年月が経ち、競合もひしめき合うプラットフォームビジネスの中でLINEの行く末を考えたとき、実験的な取り組みを同質化と並行して進めていく差別化戦略の一部として、「LINE Marketing Lab」という枠組みの中で広告分析により注力していきたいと思います。
――「LINE DATA SOLUTION」における今後の戦略について教えてください。
現在、多くの企業がCDPに大量の1st partyデータを蓄積し、データの接続性についても検討を始めていると思います。今後、そうした広告主がLINEというプラットフォームの中で最適な施策を展開したいと考えた時に備え、LINEとしても活用頂きやすい環境を用意しておく必要があります。
これは、数年前より各企業からいただいていた要望でもあります。その基盤が固まりつつある今、「LINE DATA SOLUTION」のローンチを契機に、企業それぞれの用途に応じて選択肢の幅を広げるようなLINEならではの価値を提供していくつもりです。
(取材・文/安田博勇、写真/慎芝賢)