2021.10.20
コラム

LINEデータから読み解く┃コロナ前後に見られる東京都市部の流動人口変化の遷移

 

新型コロナウイルスの脅威によって、各地で緊急事態宣言が発令されるなど、人流抑制の施策は終わりが見えない。東京都に限定すれば、2020年に初の緊急事態宣言が発令されてから、既に1年以上が経過した。

 

効果を疑問視する声も聞こえるが、LINEで取得した位置情報データ(※)から、2019年と2020年、そして2021年の流動人口がどう変化していったのか、その遷移を紹介する。

 

※位置情報データは「位置情報の取得を許可」をオンに設定しているユーザーのみ対象となります。また、個人を特定するデータは取得対象外です。取得した情報はプライバシーポリシーに従って取り扱います。
https://terms.line.me/line_location_terms_jp?lang=ja

初めての緊急事態宣言による「こどもの日」の人口変化(2019年と2020年比較)

コロナによる影響が皆無だった2019年と、初の緊急事態宣言が発令された2020年の「こどもの日(5月5日)」の昼間人口の変化を比較した。

2019年(左)と2020年(右)の東京都市部の人口変化。日時は5月5日の12:00~12:59

人口密度が高い地域ほど色が赤に、人口密度が低い地域ほど青色に近づく。平常時である2019年は赤色の地域が散在し、該当地域は新宿・渋谷・池袋・東京駅周辺などの繁華街となった。また、「こどもの日」ということも関連してか、テーマパークがある千葉県の浦安市舞浜、博物館や美術館が多い上野周辺も赤く染まっている。

 

一方、翌年の2020年は同年4月に初の緊急事態宣言が発令され、全体的に人口密度が高い赤の地域はほぼ見られない。

初の緊急事態宣言から1年後、2021年の人口変化(2019年と2021年比較)

続いて、2020年との比較材料として、2019年と2021年の人口変化を比較した。

2019年(左)と2021年(右)の東京都市部の人口変化。日時は5月平日の12:00~12:59

結果は一目瞭然。多くの人が実感しているように、緊急事態宣言が長期化した2021年は2020年に比べ、繁華街を中心に多くの人が出歩き、人口密度が高い地域が散見される。とはいえ、2019年に比べれば赤くなっている範囲も地域も限定的ではある。

都心部で減少した人口はどこにいるのか?

2020年と2021年に差はあるが、やはり2019年との比較では人口密度が低い地域が多いという結果になった。

 

多くのLINEユーザーがステイホームを実践した結果だと予測できるが、データでもあらためて確認するため、東京都心(東京駅)から距離(㎞)別の人口分布をコロナ前後で比較してみた。

緑が2019年、青が2021年、縦軸が人口、横軸が東京駅からの距離を表している

東京駅に近い距離(~7km)までは2019年の人口が多く、駅から遠くなるに従い(8km~)2021年の人口が多いことが分かる。

 

コロナ以前は勤務先となる企業が多い都市部で人口が増加していたが、2021年は在宅勤務を取り入れる企業が増えたことで、都市部の人口が減少したと予測される。

路線沿線別流動人口の変化(コロナ以後、利用者が最も減少した路線は?)

最後に、人口変動と関連性の高い路線別の駅人口の変化に注目し、東京都を通る路線の駅の昼間人口を分析した。

駅人口の減少率が高い路線TOP15

※コロナ前は2019年、コロナ後は2021年のデータ

  1. ゆりかもめ:54%(コロナ前:105,150、コロナ後:48,517)

  2. 東京モノレール:48%(コロナ前:112,034、コロナ後:58,547)

  3. 東急世田谷線:44%(コロナ前:93,418、コロナ後:52,691)

  4. 京急空港線 :42%(コロナ前:63,898、コロナ後:37,196)

  5. りんかい線:29%(コロナ前:161,863、コロナ後:114,575)

  6. 京王高尾線:27%(コロナ前:22,169、コロナ後:16,106)

  7. JR京葉線:27%(コロナ前:269,185、コロナ後:197,845)

  8. 上野東京ライン:26%(コロナ前:119,353、コロナ後:88,108)

  9. 京成押上線:25%(コロナ前:77,002、コロナ後:57,479)

  10. 京王動物園線:25%(コロナ前:17,130、コロナ後:12,818)

  11. JR山手線:24%(コロナ前:1,301,669、コロナ後:992,464)

  12. JR高崎線:23%(コロナ前:284,536、コロナ後:219,016)

  13. 宇都宮線:22%(コロナ前:270,441、コロナ後:209,898)

  14. JR中央本線(東京~塩尻):22%(コロナ前:459,037、コロナ後:357,590)

  15. JR青梅線:22%(コロナ前:109,310、コロナ後:85,235)

上位傾向としては「お台場」を経由する路線での人口減少が顕著となった。路線ごとの住宅数なども関連していそうだが、同様に減少率が高かったのが「東京モノレール」や「京急空港線」など、空港へ至る路線だ。コロナ影響で航空路線を使う利用者が激減したため当然かもしれない。

 

一方、上記には記載していないものの、「東京メトロ南北線」や「東急目黒線」のように、駅人口が増加した路線も存在した。異なるデータ、視線から分析を行うことで、この要因についての因果関係を探ることができるかもしれない。


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